開発日誌1998年5月

Windows 95 のバージョン (1998/05/09)

 Windows 95 に複数のバージョンが存在することがご存知かと思います。思いつくままにあげますと、初期出荷された Windows 95、Windows 95 + ServicePack1、Windows95 OSR1、Windows95 OSR2。OSRについては枝番(OSR2.1,2.5のように)もあるはずです。これだけある上に、IE3 と IE4 の組み合わせによって更に複雑になってしまいます。Office 95, 97 のどちらを入れているかでも若干違うのではないかと疑っています。これら全ての組み合わせで開発したソフトウェアをテストするのは大変な作業です。困ってしまうのは、組み合わせによって共通の DLL が変わってしまうことです。これが原因かどうかわかりませんが、あるマシンでは正常に動作するのに、別のマシンでは動作しないというようなことを何度か経験しました。

 正直言って、私は全ての組み合わせで開発したソフトウェアをテストしていません。特定のマシンで問題が発生したら、対処療法的に正常に動くマシンの環境と同じにするようにしています。これは、お客さんが特定されているからこそ可能なわけですが、パッケージソフトの場合等はそうもいかないでしょうね。今年は Windows 98 も出荷されることでしょう。しかし、どれだけのユーザーさんが Windows 95 から移行するのか疑問ですが、ソフトウェアを開発する側にしてみれば、また新しいバージョンが増えるわけで、頭の痛い話です。 

エディタへのこだわり (1998/05/13)

 私にとって、開発ツールの中でも一番こだわりのあるのがエディタです。統合環境(IDE)上では、IDE のエディターを使うほうが効率的です。おかげさまで、標準(?)のキー操作にもだいぶ慣れてきました。それでも、私にとって VB のエディター(エディターとは言わないでしょうが)は最悪です。その点、VCはまだましです。キーカスタマイズがある程度可能ですし、メニューに使いなれたエディタを登録くことができますから。

 今使っているエディターは WordStar ライクなキーアサインにしています。DOS時代は EZ(VZの前身)、VZ と使ってきました。Windows に移行してからは、なかなか手になじむエディターを見つけることができませんでした。一昨年 PowerEditor というエディターに出会ってからは主にこれを使ってます。このエディターが秀逸なのは VZ のエミュレーションです。昔使っていた VZ.INI(VZIBMJ.INI)をそのまま使える上に、驚くほど忠実にエミュレートしてくれます。難点は少々重いということでしょうか。

雑誌の功罪 (1998/05/15)

 私たちにとって、ユーザーさんは大切なお客様です。どの業界でも同じでしょうが、お客さんに逆らえばろくなことにはなりません。しかし、たまにいやだなと思うユーザーさんに出会うことがあります。コンピュータ雑誌なんかで聞きかじりの情報を仕入れたユーザーさんです。このようなユーザーさんは、新しいもの好きですし、活字になっている情報は盲目的に信じきってます。こういったユーザーさんを説得するのは、仕事とはいえいやになってしまうことがあるわけです。

 ユーザーさんにも問題はありますが、一方で、日本のコンピュータ雑誌の功罪も大きいと思います。嘘八百を並べ立てているわけではないですけど、カタログスペックレベルのことでも誇張して書いてあったり、提供される機能に存在する問題点についての記述がなかったりするために、読者へ間違った印象を与えているのだと思います。最新技術や機能を使わずとも、旧来のもので実現できるのであれば、私はそちらを選択します。実績があるもののほうが安心ですから。いかにも保守的な考えではありますが、開発現場の正直なの感覚だと思います。

納期に追われて (1998/05/17)

 ロクな工数もとらずに開発すると、結局ロクなものはできません。しかし、よくこういった仕事に出くわします。そういった仕事はやらないにこしたことはないのですが、いろいろなしがらみでやらざる得ないこともしばしばです。一応プロの端くれですから、限られた予算と時間内で最良のものを作る努力はします。しかし、たとえ納期に間に合ったとしても後味が悪いです。一番疎かにしてはいけないテスト(バグ出し)を実施する工数が不足したまま納品せざる得ないからです。作るのに精一杯ということですね。良いシステムを作るには、予算に見合った規模と、十分なテスト工数を見積もって欲しいと思います。

MSが提訴されましたね (1998/05/19)

 ご存知だと思いますが、昨日MSが提訴されましたね。これは、PC業界にとって重要な第一歩だと思います。MSは相変わらず眠たいこと言ってますけど、揚げ足取りと問題のすりかえをやっているようにしか思えません。例えば、ゲイツさんは「政府規制官たちが適用したがっているルールに基づけば,Microsoftはネットワーキングのサポートも,メモリ管理も,グラフィカルインタフェースも,その他のコンシューマーツールも(OSに)統合できなくなる」と主張しています。なんか子供の屁理屈みたいに聞こえませんか?問題となっているのは、MSが自社OS上で動く他社のソフト、あるいは、PCハードウェアビジネスや Internet ビジネス等に不当な制限を加えている点です。だからこそ、そういった制限を排除しろと政府から提訴されたわけです。これぐらいの意味はわかっているはずでしょうけど、正式なコメントで上記発言を行うあたりがなんか笑ってしまいます。しかし、もうこれは笑っては済まされないのですよね。

プログラミングがおっくうになってきた (1998/05/25)

 30歳をこえたあたりからプログラミングがおっくうになってきました。ここ数年は、生活のために惰性でやってるという感じです。考えてみると今まで開発してきたシステムってどれもよく似てます。プラットフォームが DOS であったり Unix であったり Windows であったり、あるいは DB が違ったりします。でも、やってる中身は変わりません。たぶん私が事務系のシステム開発をずっとやってるから、特にそう思うのでしょう。「XXX管理システム」なんてのは、基本的には DB に対して、データ入力、検索、集計、出力するだけですものね。どんな方法で作ろうがやってることは同じなわけでして「おっくうになった」というより「飽きた」という言葉のほうがぴったりかもしれないです。

NT Server と BackOffice の抱き合わせ(1998/05/27)

 MSが提訴された件にからみますが、NT Server と BackOffice 類の抱き合わせは問題視されないのかなあと思いました。今度、Microsoft BackOffice Server という製品が出るようですが、それには、NT Server 4.0 と NT Option Pack (Internet Information Server, Transaction Server, Message Queue Server, Index Server, Certificate Server, Management Console) と Exchange Server, Site Server, SQL Server, Microsoft SNA Server, Microsoft Systems Management Server, Microsoft Proxy Server 等、てんこもり状態です。IEのようにOSに統合される云々と言い出したり、価格設定が破格だったりすと問題になるんじゃないでしょうか?

コンピュータへの幻想 (1998/05/30)

 ユーザーさんの中には、コンピュータを導入すれば何でもできるという幻想を抱いている人がいます。今までやってきた煩わしい作業から解放され、全てがボタンひとつで自動処理されると勘違いしている人です。こういった人達は、システムを売り込む営業にとって良いカモです。「あれもやりましょう」「こんなこともできますよ」と話を大きくできます。ユーザーさんがお金を注ぎ込んでくれることは我々にとって大いに助かります。ですから敢えて止めはしません。が、後で「こんなはずじゃなかった」ということにならないために、しっかりと「コンピュータで何をしたいのか」を考えて欲しいと思います。

 まず、営業やSEまかせでシステムを構築するとロクなものができません。当たり前の話ですが、彼らはコンピュータシステムのプロですが業務のプロではないからです。必ず現場の担当者を交えたディスカッションを行い「何を実現するか」を明確にすることが大切です。現場の声を反映しないシステムは見捨てられます。彼らは毎日その業務を遂行しているプロですから、日々の業務の中で生まれた創意工夫が必ずあります。それを無視するとせっかくのシステムもうまく動きません。

 また、最初から「あれもやろう」「これもやろう」と思わないほうが無難です。定型化されている業務を洗い出して、コンピュータ化によるメリットを最も享受できる部分から手をつけたらいいと思います。イレギュラーや人による判断が多い部分はダメです。コンピュータシステムと手作業の二重処理が必要となり、かえって業務量が増えたりします。実際に、こういった二重苦に陥るケースはよく見受けられます。

 次に、アウトプットは付加価値として捉えたほうが懸命です。コンピュータ化する業務で必要となる入力データに対象を絞り、そこからどんなアウトプットが得られるかを考えます。最初にアウトプットを主体に考えてしまうと、そのためだけの別入力が増えてかえって非効率となるケースがあります。コンピュータといえども、データ入力は依然として人手に頼るわけです。たとえどんなに素晴らしいアウトプットを得ることができたとしても、業務量が増えては効率化を果たしたとは言えません。「業務の負担を増やさずにスピードアップを図る」という意識を持つことが大事です。ここらへんはバランスの取り方が難しい部分です。少しの負担で大きな効果が得られる場合は検討に値するでしょうし、また、仕事量を増やしてもそれに見合うアウトプットを得られるならば人手を増やすという選択肢もあります。

 情報処理と言われるように、コンピュータは単に情報を処理する機械です。変な幻想は抱かずに、工場の機械と同じようなものと考えたほうが賢明です。

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